【一級建築士が解説】外壁の修繕工事と補修工事の違い

外壁塗装（外壁塗り替え）で修理ができるのか？簡単な補修工事でなおるのか？悩んでいる方がよくあります、確かに安価で済ませたいなら、シーリング（コーキング）工事がいいですと業者が言う場合があります。

「本当に応急処置やコーキングで大丈夫か？」ご確認してください

ここで、修繕工事と補修工事について話したいと思います、また改修工事についても少し話します。

修繕工事と補修工事はどちらが我が家に向いている？

修繕（工事）とは

修繕とは、対象の建物を建設した当初の水準に戻すために実施される工事です。工事では建物の見た目や機能などを元の状態に戻します。
修繕工事の際に使用される材料は、同じものもしくは近いものが選ばれます。

ここで、見間違いやすい事象は
築5~10年前後で雨漏れや外部の不具合が起こっている物件は建物の状況や劣化を、より適切に把握することをおすすめします。

補修（工事）とは

補修とは、住宅の劣化や不具合が生じた箇所を実用上問題のない程度に補う工事です。この工事は修繕と異なり一定期間ごとに行わず、その都度応急的な処置になります。補修工事は小修繕ともいいますが、修繕工事とは別物とお考え下さい。

例えば、外壁部分にひび割れや浸水した箇所がある場合はシーリング工事（コーキング工事）を行う場合があります。シーリングとは、継ぎ目やひび割れや隙間を充填する作業ですが、万能ではありません。

　建設当初の水準に戻す修繕と比べると一時的な処置に過ぎず、該当箇所の安全性が長期間保たれるとは言い難い場合も稀あります。また慢性雨漏れ劣化等の状況によっては補修工事で済まないこともあります。

補修工事前の施工業者との打ち合わせをした場合、工事内容を修繕に変更するケースもよくあります。該当箇所の工事をする前に状況を調査し、適切な工事を行いましょう。

※ここで一般的に言われている補修工事は修繕工事よりレベルが高いように思われがちですが、建築工事の管理者からのアドバイスとしては「元の性能状態にまで繕（ツヅクロウ）＋修（オサメル）修繕が、応急処置的な補修工事より、望ましいと思います」

外壁修繕と外壁補修の違い

修繕工事は下地からの修繕が必要です。

修繕工事と補修工事の違い

修理工事と補修工事の違いについて

修繕工事	外壁塗装工事のほか、板金工事、タイル工事、左官工事、大工工事などを行って、 外壁劣化を新築時点の状況に戻す工事をいいます
補修工事	建設当初の水準に戻す修繕と比べると一時的な処置の場合もあります。 該当箇所の安全性が長期間保たれるなら補修工事でも可能です。

外壁塗装工事の補修でコーキング補修などを行う場合もありますが、外壁の劣化程度によっては工事後に雨漏れやトラブルが再発することもあるので注意が必要です。

各家の状況によって必要な工事は異なります。10年毎ごとに外壁塗装の工事をおこなっいる施主様と、20年以上外壁塗装をしておらず雨漏れが起こっている施主様の場合と補修工事から補強方法が全く違います。

外壁塗装を行う前の下準備も変わって当然、と理解してほしいです。

修繕工事重要性について

雨漏れが起こりやすい、外壁・屋根の状況のイラスト

15年以上放置した外壁・屋根の劣化は、雨漏れのリスクが非常に高くなっていることが多いです。

外壁内部に問題が発生している状態で、上から外壁塗装を行うと、再度雨漏りが発生したりメンテナンスの工事が起こる場合がよくあります。このような、無駄を起こさせないためにも、ご自身の知識も重要です。

慢性の雨漏れや外部の劣化が気になる場合は、一度外壁診断をしてもらった上で外壁屋根の修繕工事か補修工事かへの検討をおすすめします。

外装改修工事・外装修繕工事・外装補修工事の違い

各工事のイメージをお伝えします。

外壁改修工事（慢性雨漏れや雨漏れが起こっている外壁の場合）

外壁全面リフォーム（不安部位の撤去・下地から全面改修が本来の工事）

・劣化部位および全面の撤去から透湿防水シート＋サイディング張替え（現状より軽量）＋コーキング

※　雨漏れの場合は外壁内部の老朽化から、施工不良の工事も視野に入れておく必要があります。築10年未満からの慢性雨漏れは十分に注意が必要です。

外壁修繕工事（部分撤去下地からの）

外壁修繕工事：劣化部位の撤去から透湿防水シート＋サイディング張替え＋コーキング

※　透湿防水シートや雨仕舞の施工不良から起こっている場合もあります、応急処置では一時的に雨漏れが止められても新築時にまでの性能に戻すには、下地までの撤去修繕工事を検討されることをおすすめします。

外壁補修工事（小修繕・応急処置からの工事）

※　雨漏れの場合や外壁の劣化状況にもよりますが、簡単に修復できない場合が多くあります。人間の体の場合自然治癒力で回復する場合がありますが、一度劣化した建築物は自然に治らないとお考えになった方が普通と思われます。

外壁補修工事：相見積もりの依頼方法に3社の分類を説明します。

最近見積を斡旋されているHPもよく見かけます、どの業者で外装工事やメンテナンスは問題はないのです。

自宅に適合している「工事内容はどうしたらいいのか？」と悩んだ時の参考にしてください。

⓵工務店：新築住宅を建てている、信頼できる建築士・施工管理士に現状を説明してもらう

②リフォーム専門店：建築士の在籍及び現状を説明してもらう

③外壁塗装店：外壁塗装の見積書をよく見かけますが、塗り替えで施主様の思う方法で雨漏れが止まるかの確認が必要かと思います。

次に、劣化の種類から外壁塗装の修復・修繕・補修どちらを実施するべきかについて説明します。

外壁劣化の症状から判断する

外壁劣化の症状からどんな工事が必要か、下記の表をご参考ください。

対象の箇所	劣化の症状	具体的な修復・修繕・補修
外壁（モルタル壁/ALC壁）	・チョーキング現象 ・カビ・苔の発生 ・塗装面の小さなひび割れ ・塗装の変色・剥離 ・コーキングの劣化	外壁塗装工事およびコーキング補修で基本的に対応可能 （築10年未満） ※築10年超や外壁内部に劣化が進行していたなど、状況によってはそのほかの修復・修繕工事が必要
外壁(金属サイディング）	・サビが目立つ	外壁塗装工事 ※劣化が目立つ場合は、張替えを検討
外壁（モルタル壁/ALC壁/窯業系サイディング）	・大きな外壁のヒビ	(例）鉄筋コンクリートの場合はエポキシ樹脂注入など ※ひび割れの原因を確認して、修繕工事を行います 外壁素材によって対応は変わります
外壁（窯業系サイディング）	・サイディングの反り・変形 ・サイディングの劣化・ひび割れ、雨漏れ ・釘の飛び出し	外壁サイディング貼り・補修 外壁カバー工法への改修工事の検討 ※雨漏れが起こっている場合は、雨漏れの部位を解体または下地から修復・修繕工事への変更
外壁（タイル仕上げ）	・タイル目地の白華が激しく起こっている。 ・タイルのハガレ・落下が起きている。	タイルの張替え・部分補修またはサイディングへの改修工事など検討 ※タイルの落下は通行人や住民の方にも影響が起こる可能性があります。
屋上・ベランダ	・シート防水の亀裂が発生している	シート防水の張替え・修繕工事 ※雨漏れが年に数回起こっている場合は、修繕工事・改修工事も視野に入れて検討
屋根（カラーベスト）	・コケの発生、色あせ	屋根塗装・屋根カバー工法等
屋根（カラーベスト）	・雨漏れが起こりだした。	屋根のカバー工法（金属ルーフ） ※補修から修繕や改修工事を検討する方がいいと思います。
屋根（瓦屋根）	・瓦の割れ・漆喰の劣化	瓦の補修・漆喰の補修
屋根（瓦屋根）	・雨漏れ ・激しい劣化	瓦の葺き替え ・軽量瓦・耐震瓦 瓦の補修・漆喰の補修 ※補修から改修・修繕を検討する方がいいと思います。

一般的にHPで修繕と補修の違いを考えてみる

建築関係のHPで修繕と補修の違いをサイトをご覧になれば、いろいろな意見もあると思いますが、「補修工事なら大丈夫です」といっている会社は少ないと思います。

仕様変更（外装リフォーム）による改修工事

補修から外装リフォームのパターン（参考資料）を載せさせていただいております。

外装改修工事（外壁改修工事）・外装リフォーム工事

補修工事・修繕工事からより、劣化部を改修する工事に外装リフォーム工事があります、これらは完全とはいえないまでも、補修工事や修繕工事と比較すると、より劣化部の対策や雨漏れを防ぐことができます。

外装リフォーム：崩落したタイル外壁を金属サイディングに変更した例

下記は、崩落したタイルの外壁を金属サイディングに変更した例です。

本例でのお客様が外装リフォームを考えた理由は下記の通りです。

• タイルの劣化と落下が気になっていた
• 築年数から、外壁の重量の軽量化を考えた
• コストの面で塗装業者からタイルの防水塗装を進められたが、タイルの落下で周囲に迷惑をかけられないと思った

外装リフォーム：外壁サイディングの施工不良による慢性の雨漏れの補修例

下記は、外壁サイディングの施工不良による慢性の雨漏れを補修した例です。

本例でのお客様が外装リフォームを考えた理由は下記の通りです。

• 外壁の劣化や雨漏れが気になっていた
• 塗装業者だけではなく、雨漏れの調査が必要と考えた

外装リフォーム：屋上やベランダの劣化による慢性の雨漏れの補修例

本例でのお客様が外装リフォームを考えた理由は下記の通りです。

• 鉄製の手すりや階段の劣化で危険ではないかと不安に思い、手すりや階段の腐食（さび）から、金属部（溶接業者）のリフォームが必要と考えた

外装リフォーム：和瓦から金属ルーフの例

本例でのお客様が外装リフォームを考えた理由は下記の通りです。

• 瓦屋根の劣化による雨漏れが起きていた
• 屋根の重量が気になったので軽量化して耐震性能を向上させたかった

外装リフォーム：劣化しているカラーベストから金属ルーフの例

下記は、劣化しているカラーベストから金属ルーフの例です。

本例でのお客様が外装リフォームを考えた理由は下記の通りです。

• 屋根の重量を軽量化して耐震性を向上させたかった
• 屋根の塗り替えの回数を減らしたかった。

まとめ

■：補修工事は下地をどの程度まで手直しを行えるか？判断の基準になります。（完全な修繕は、むつかしい場合もあります。）

■：修繕工事は下地の修復を行う範囲または、必要性がある場合は打ち合わせ内容の確認が必要になります。

■：改修工事・外装リフォーム工事は下地から、撤去または防湿シートをおこなって、雨水の侵入や劣化対策をおこなっていることが施工や判断のポイントになります。

外壁塗装かリフォームか、どちらが必要かわからない場合は、塗装業者・工務店・リフォーム店など複数の業態の業者に相見積もりの依頼することをおすすめします。

塗装会社だけでなく、工務店やリフォーム会社にも依頼・提案してもらうことで、どんな工事が必要なのか妥当性を判断することができます。

また塗装だけで直る外壁と塗装以外に補修が必要な外壁の症状を下記のコラムに記載していますのであわせてご参考いただけますと幸いです。

(関連記事)【外壁劣化の種類は？】塗装で直せる壁と塗装だけでは直せない壁の違い

なお、弊社も大阪を中心に皆様のお家の外壁塗装工事をさせていただいております。

もし外壁塗装工事で疑問点・ご相談などございましたら「ミズノライフクリエイト」にお越しいただけたらと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。